はじめに「行政書士法改正」「 補助金」が注目される理由
2026年1月に改正行政書士法が施行されてから、約7か月が経過しました。
この間、「行政書士 補助金」「行政書士法改正 補助金」「補助金 行政書士」といったキーワードでの検索が増え、SNSやインターネット上でも「補助金コンサルティングは禁止になるのか」「行政書士しか補助金申請を支援できなくなるのか」といった情報が数多く発信されました。
結論から言えば、今回の改正によって補助金コンサルティング自体が禁止されたわけではありません。一方で、「誰が官公署へ提出する書類に責任を持つのか」という点は、これまで以上に明確になりました。
本記事では、行政書士法改正の内容を条文レベルで振り返りながら、補助金申請支援の現場で実際に何が変わったのか、そして経営者が専門家を選ぶ際にどのような視点を持つべきかを、オリジナルの役割分担図を交えて解説します。
なぜ今、改正されたのか―背景にある問題意識
今回の改正の背景には、補助金申請を取り巻く環境の変化があります。
近年、補助金活用を目的とした「補助金コンサルティング」を名乗る事業者が急増し、なかには十分な知見がないまま高額な成功報酬で事業計画書の作成まで請け負うケースも見られるようになりました。
事業計画書は単なる社内資料ではなく、国や自治体などの官公署に提出される公的な書類です。
内容に不備があれば、企業側が思わぬ不利益を被ることもあります。
また、採択後に内容と実態が食い違っていることが発覚すれば、補助金の返還や企業の信用低下につながるおそれもあります。
こうした状況を踏まえ、「官公署へ提出する重要な書類は、誰が責任を持って作成するのか」という点を法律上あらためて整理する必要性が高まったことが、今回の行政書士法改正につながっています。
単に業界内の縄張り争いではなく、申請者である中小企業を守るための改正という側面が大きいことは、経営者としてぜひ押さえておきたいポイントです。
行政書士法改正とは―制度の全体像
行政書士法は、行政書士の業務・使命・責任などを定める法律です。
行政書士は、官公署へ提出する書類の作成、許認可申請の代理、契約書などの権利義務・事実証明に関する書類の作成を通じて、事業者や国民の権利利益を守る専門家として位置付けられています。
補助金、融資、建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、宅建業免許など、多くの行政手続きは企業経営と密接に関わっています。
今回の改正は、こうした手続きを安心して専門家に依頼できる環境を整備することを目的としており、次の5点が主な改正内容です。
- ① 行政書士の使命の明文化
- ② 行政書士の職責の新設
- ③ 業務独占規定(第19条)の明確化
- ④ 両罰規定の整備
- ⑤ 特定行政書士制度の拡充
以下、補助金支援に特に関係の深い①〜④について、条文の趣旨を一つずつ確認していきます。
条文解説①|行政書士の「使命」が法律に明記された
今回の改正では、行政書士は行政手続きの適正かつ円滑な実施に寄与し、国民の権利利益の実現に貢献することを使命とすることが、法律上はっきりと位置付けられました。
これは単なる理念規定ではありません。
行政書士は書類を作成するだけの存在ではなく、行政手続きを通じて企業活動や国民生活そのものを支える専門家であることが、法律上も明確になったということです。
補助金申請の文脈に置き換えると、事業計画書という「書類」を仕上げることだけが行政書士の仕事ではなく、企業の挑戦を制度面から支え、申請者の権利利益を守ることそのものが行政書士の使命として明文化された、と理解することができます。
条文解説②|行政書士の「職責」が新設された
今回の改正では、「職責」という規定も新たに設けられました。行政書士には次のことが求められます。
- 法令や実務に精通すること
- 常に知識・能力の向上に努めること
- 誠実かつ公正に業務を行うこと
補助金制度は毎年のように見直され、電子申請の仕組みも年々アップデートされています。
例えば、ものづくり補助金、新事業進出補助金、小規模事業者持続化補助金などは、公募のたびに公募要領が更新され、加点項目や必要書類が変わることも珍しくありません。
こうした制度改正を理解しないまま支援を行えば、申請者である企業に不利益を与えてしまうおそれがあります。
そのため、行政書士には継続的な研鑽が法律上の職責として求められることが明確になりました。これは補助金支援を依頼する経営者にとっても、専門家選びの重要な判断材料になります。
条文解説③|業務独占規定(第19条)はどう変わったのか
今回の改正で最も話題になったのが、行政書士法第19条です。条文には次の文言が追加されました。
「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」
この一文だけが切り取られ、「補助金コンサルティングは禁止になった」「行政書士でなければ補助金支援は一切できない」といった、実態とは異なる極端な情報も広がりました。
しかし、そのように理解するのは正確ではありません。
今回の改正は、新たに行政書士だけができる業務を増やしたものではなく、従来から行政書士法が予定していた「官公署へ提出する書類の作成」という考え方を、より分かりやすく明文化したものと理解されています。
つまり、次のような業務まで行政書士だけの独占業務になったわけではありません。
- 経営分析・経営課題の整理
- 事業戦略の立案
- 補助金制度に関する情報提供
- 採択後の伴走支援(実績報告のサポートなど)
一方で、事業計画書のうち官公署へ提出する書類そのものの作成については、報酬を得て行う場合、行政書士でない者が「業として」行うことは原則としてできません。
重要なのは、「誰が何を独占しているか」を正しく切り分け、それぞれの専門家が自らの専門性を活かして適切に役割分担することです。
具体的なイメージを持てるよう、適法・違法の境界を整理すると次のようになります。
-
問題になりにくい行為の例
‣ 経営課題のヒアリングと分析
‣ 事業戦略の方向性の提案
‣ 補助金制度の紹介や採択事例の情報提供
‣ 事業計画の「内容」に関する助言
-
行政書士法上、注意が必要になり得る行為の例
‣ 報酬を得て、官公署へ提出する事業計画書そのものを作成・完成させる行為
もっとも、この境界線は個々の契約内容や業務の実態によって判断が分かれる部分でもあります。
「うちの支援はどちらに当たるのか分からない」という場合は、依頼先の専門家に率直に確認することをおすすめします。
条文解説④|法人にも責任が及ぶ「両罰規定」の整備
今回の改正では、法人に対する両罰規定も整備されました。
従来は違反行為を行った個人が責任を問われることが中心でしたが、法人として業務を行っていた場合には、その法人自体も責任を問われる可能性があることが明確になりました。
これは補助金支援を依頼する企業にとっても無関係ではありません。支援を依頼する際には、次のような点を確認することが、これまで以上に重要になります。
- どのような体制(誰が・どの範囲を)支援しているのか
- 最終的に誰が事業計画書・申請書類を作成しているのか
- 契約関係・報酬体系は明確になっているか
もし無資格の個人・法人が、報酬を得て業として官公署提出書類の作成を行っていたことが発覚した場合、行政書士法違反として罰則の対象となる可能性があります。
両罰規定の整備により、行為者個人だけでなく、その者を業務に従事させていた法人にも責任が及び得る点が明確になりました。
補助金支援を依頼する企業側から見ても、依頼先の業務体制を確認することは、将来的なトラブルを避けるための重要なリスク管理の一つといえます。
あわせて押さえたい|特定行政書士制度の拡充
今回の改正では、「特定行政書士」制度の拡充も行われました。
特定行政書士とは、行政書士が作成した申請書類について、不許可処分などが下された場合に不服申立て(審査請求など)の手続きまで対応できる資格を持つ行政書士のことです。
補助金申請では、不採択になった場合に不服申立ての制度が用意されているわけではありませんが、建設業許可や産業廃棄物収集運搬業許可など、補助金活用の前提となる許認可手続きにおいては、万が一の不許可処分に対して特定行政書士がその後の手続きまで一貫してサポートできる点は、経営者にとって心強いポイントです。
制度の拡充により、こうした一貫対応がこれまで以上に期待できるようになりました。
【図解】補助金申請支援における専門家の役割分担
ここまでの内容を踏まえ、補助金申請支援に関わる専門家の役割分担を図にまとめました。
-
中小企業診断士・コンサルティング会社
経営分析や事業戦略立案、伴走支援を担当 -
行政書士
官公署提出書類の作成や申請代理を担当。両者が連携することで補助金の採択・活用を実現する
両者が連携することで補助金の採択・活用を実現する
図のとおり、中小企業診断士・コンサルティング会社は経営分析や事業戦略の立案、採択後の伴走支援を担い、行政書士は官公署へ提出する書類の作成や申請サポート、関連する許認可対応を担います。
両者が対立するのではなく、経営者を中心に連携することで、質の高い補助金支援が実現します。
補助金申請への具体的な影響
それでは、今回の改正は補助金申請の実務にどのような影響を与えるのでしょうか。プロセスごとに整理します。
① 経営分析・事業戦略の立案フェーズ
自社の強み・弱み、市場環境、今後の成長戦略を整理するフェーズです。
このフェーズは、今回の改正後も行政書士以外の専門家(中小企業診断士やコンサルティング会社)が担うことが可能です。
むしろ経営分析力・戦略立案力は、こうした専門家の強みが発揮される領域といえます。
② 事業計画書の作成フェーズ
経営分析・戦略をもとに、補助金の審査項目に沿った事業計画書へと落とし込むフェーズです。
ここが最も誤解を招きやすい部分ですが、事業計画書の「内容」を検討すること自体は独占業務ではありません。
ただし、それを報酬を得て官公署へ提出する正式な申請書類として作成する行為については、行政書士法の業務独占規定に関わります。
たとえ「コンサルティング料」「アドバイス料」などの名目であったとしても、申請書類の作成を行うのであれば、改正行政書士法の19条に反することとなります。
③ 採択後の伴走支援フェーズ
採択後の実績報告や事業実施のサポートについても、経営面のサポートは引き続き中小企業診断士やコンサルティング会社が担うことができます。
一方、実績報告書など官公署への提出書類の作成に関わる部分は、行政書士との連携が望ましい領域です。
このように、補助金申請支援は一つの業務のように見えて、実際には複数のフェーズから成り立っています。
「補助金 行政書士」に何を依頼し、「経営コンサルタント」に何を依頼するのかを経営者自身が理解しておくことが、今回の改正後はより重要になったといえるでしょう。
具体例で考える|省力化投資補助金(一般型)を申請するケース
例えば、製造業のA社が、省力化投資補助金(一般型)の申請を検討しているとします。
A社はまず民間のコンサルティング会社や中小企業診断士に相談し、設備投資の必要性や生産性向上の見込みについて経営分析を受けます。
次に、その分析結果をもとにコンサルティング会社と事業計画のストーリーを固め、審査項目に沿った数値計画(投資回収計画・付加価値額の伸び率など)を作り込みます。
そして最終段階で、行政書士がこれらの内容を公募要領の要件に沿った正式な申請書類としてまとめ、電子申請システムを通じて提出代理を行います。
採択後は、再び中小企業診断士やコンサルティング会社が実績報告に向けた経営面のサポートを担い、行政書士が報告書類の作成をサポートする、という流れです。
このようにフェーズごとに専門家を使い分け、連携することが、今回の改正後における補助金申請支援の望ましい形といえます。
経営者が専門家を選ぶ際に確認したい3つの視点
補助金支援先を選ぶ際、経営者はどのような視点を持てばよいのでしょうか。今回の改正を踏まえると、次の3点が特に重要になります。
視点①:誰が事業計画書・申請書類の作成責任を負うのか
依頼先の担当者が経営コンサルタントなのか行政書士なのかによって、最終的に誰が申請書類の作成・提出に責任を持つのかが変わります。契約前に、この点を明確に説明してもらいましょう。
視点②:行政書士とコンサルタントが連携する体制を持っているか
経営分析から申請書類の作成まで、一貫してワンストップで対応できる体制があるか、それとも自社で複数の専門家を個別に手配する必要があるかによって、負担や進め方は大きく変わります。連携実績のある事務所・企業かどうかも確認しておきたいポイントです。
視点③:契約内容・報酬体系が明確で、適正な業務運営がなされているか
着手金・成功報酬の割合、業務範囲、途中で不採択となった場合の対応など、契約条件が書面で明確になっているかを確認しましょう。両罰規定の整備により、支援側の法人としての業務体制も問われる時代になっています。
「行政書士法改正 補助金」というキーワードで情報収集をしている経営者の多くは、「今後どこに相談すればよいのか分からない」という不安を抱えています。
しかし本質は、行政書士だけ、あるいはコンサルタントだけに全てを任せるのではなく、それぞれの専門性を活かした連携体制があるかどうかを見極めることにあります。
行政書士はどこまで対応できるのか|業務範囲の目安
「結局、行政書士に何を頼めるのか」という疑問を持つ経営者も多いのではないでしょうか。一般的に、補助金申請に関連して行政書士が対応できる業務の目安は次のとおりです。
- 公募要領・申請要件の確認、必要書類の洗い出し
- 事業計画の内容を、審査項目・様式に沿った申請書類として仕上げる作業
- 電子申請システムを通じた申請書類の提出サポート
- 採択後の各種届出、実績報告書類の作成
- 補助金活用に付随する許認可(建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可など)の取得サポート
一方で、事業そのものの成長戦略や資金繰り、財務分析といった経営そのものに関する助言は、経営支援の経験の少ない行政書士では対応が難しい領域であり、中小企業診断士や税理士、金融機関との連携が必要になる部分です。
この点からも、専門家同士の連携体制がいかに重要かが分かります。
FAQ|行政書士法改正と補助金支援に関するよくある質問
Q1. 今回の改正で、行政書士でない者による補助金コンサルティングは禁止になったのですか?
A. いいえ、禁止にはなっていません。
経営分析や事業戦略の立案、情報提供、伴走支援などは、引き続き行政書士以外の専門家が行うことができます。
改正で明確になったのは、官公署へ提出する書類の作成・提出代理を「業として」行う場合の位置付けです。
Q2. 中小企業診断士は、もう補助金支援ができなくなるのですか?
A. いいえ。中小企業診断士は経営分析や事業計画のブラッシュアップなど、これまで通り重要な役割を担うことができます。官公署への提出書類の作成については、行政書士と連携しなければなりません。
Q3. すでにコンサルティング会社に依頼している場合、契約を見直す必要がありますか?
A. 直ちに契約を見直す必要があるとは限りませんが、「誰が申請書類の作成を担っているのか」を改めて確認しておくことをおすすめします。不明な場合は、依頼先に確認してみましょう。
Q4. 行政書士と中小企業診断士、どちらに相談すればよいですか?
A. 経営分析や事業戦略の相談は中小企業診断士やコンサルティング会社へ、申請書類の作成・提出代理は行政書士へ、というように使い分けることで、それぞれの専門性を最大限に活かせます。
もしくは当事務所のように支援経験の豊富な行政書士にご相談いただくとワンストップでの支援が可能です。
Q5. 行政書士とコンサルティング会社が提携して支援することは可能ですか?
A. 可能です。実際に、行政書士事務所とコンサルティング会社・中小企業診断士が連携し、経営支援と書類作成をそれぞれ分担して対応する体制も広がっています。当事務所でも、高い能力と専門性を持つ診断士の先生などが、適法に業務継続できるように、こうした連携を積極的に進めています。
Q6. 今依頼している支援先が改正に対応しているか、どう見分ければよいですか?
A. 分かりやすい目安は、「事業計画の中身」と「官公署への提出書類」を誰が最終的に仕上げているかを、依頼先がはっきり説明できるかどうかです。役割分担や連携先の専門家について曖昧な説明しかない場合は、一度確認してみることをおすすめします。
まとめ
行政書士法改正から7か月が経過し、現場では少しずつ冷静な議論が進んでいます。今回の改正は、行政書士だけのための改正ではなく、補助金を活用する中小企業、中小企業診断士、コンサルティング会社など、中小企業支援に携わるすべての専門家に関係する改正です。
改めてポイントを整理すると、次のようになります。
- 行政書士の使命と職責が法律上明確化され、継続的な研鑽が求められるようになった
- 第19条の改正は、独占業務の範囲を新設したものではなく、従来の考え方を明文化したものである
- 両罰規定の整備により、法人としての業務体制も問われる時代になった
- 経営分析・戦略立案は引き続き中小企業診断士やコンサルティング会社が担うことができる
- 官公署への提出書類の作成・提出代理は、行政書士が責任を持つべき領域として位置付けが明確になった
「行政書士 補助金」「補助金 行政書士」といったキーワードで情報を探す経営者にとって重要なのは、行政書士とコンサルタントのどちらが正しいかという二項対立ではなく、誰がどの役割を担うのかを理解し、適切な連携体制を持つ専門家を選ぶことです。
補助金申請でお悩みの際は、経営分析から申請書類の作成まで一貫してサポートできる体制が整っているか、ぜひ確認してみてください。当事務所では、経営コンサルタントとしての経験も豊富にあるため、経営コンサルタントと行政書士の両面の特性をもつことから、経営者の皆様が安心して補助金を活用できる体制が整っています。
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